DELE C1を実体験をもとに検証します。
2021年度7月開催のDELE C1を受けてきました。結果は、「NO APTO」不合格でした。不合格だったことで見えてきた課題が数多くあるので、実体験をもとに勉強方法や解答のヒントなどを紹介します。
まず、採点結果はこうでした。
得意な分野と苦手な分野の差が大きく出ています。
スピーキングでは、ほぼ満点なのにも関わらず、リーディングやライティングでは半分しか点が取れていません。
総得点は68.05点で、DELEの合格基準である60%以上というのは満たしているのですが、DELEの採点方法ではそれだけでは合格になりません。
リーディングとライティング(グループ1)の合計が30点以上、リスニングとスピーキング(グループ2)の合計が30点以上でなければ、不合格です。
出題傾向を踏まえて、受けてみた感想をお伝えします。
≪合わせて読む↑≫
目次
DELE C1の参考書
参考書は、edelsa社が出版している「Prepración al Diploma de Español Nivel C1」を使いました。
インスティトゥト・セルバンテス スペイン語書籍専門書店:
Preparación al DELE C1. Libro/Clavesセット
実際の試験モデルに従った出題形式の参考書で、6回分の模擬試験ができます。
各章が教育、健康、科学、技術、芸術など別々のテーマに分けられているので、それぞれのテーマに合った文章や語彙を学ぶことができます。
さらに、各章の冒頭にはテーマに関連した単語一覧も記載されているので、語彙力強化に最適です。
リスニング問題やライティング問題の音声は、出版社「edelsa」のウェブサイトにてマイページ新規登録をして音声ファイルをダウンロードします。
edelsa公式ウェブサイト https://edelsa.es/es/
ライティング問題とスピーキング問題には、解答例がありません。解答ヒントは記載されているのですが、正直物足りないです。
独学で勉強をされる人は、ライティング対策とスピーキング対策は十分にできない可能性があります。
参考書には付録されていないですが、本番を想定して解答シートに実際に記入しながら模擬試験をすることをおススメします。
解答用紙をダウンロードする ( dele-c1-modelo-hoja-de-respuestas)
DELE C1「リーディング」の解答のヒント
DELE C1「リーディング」TAREA 1・TAREA3の解答方法
TAREA1は教育に関するテーマの読解、TAREA3は地理・歴史に関するテーマの読解でした。
長文読解なので、テキスト全体の解釈力が求められているのですが、それよりも大切なことは、それぞれの問題に対してカギとなる1文をみつけることです。
そのためには「問題文を読む、本文を読む」を細かく繰り返して解いていくことです。
解答方法は、
1.問題1を読む
2.問題1の選択肢も全て読んで、カギとなりそうな単語に下線を引く
3.問題2を読む(問題1がどこまでか、問題2がどこからはじまるか把握するため)
4.下線部を意識しながらテキストを読む
5.問題1を解答する
6.問題2を読む...
このサイクルを繰り返して解くことをおススメします。テキストの順番通りに問題が出てくるので行ったり来たりせずに1問1問集中して解くことができます。
DELE C1「リーディング」TAREA2の解答方法
並び替え問題なので、苦手な人が多いかもしれません。
他の問題と異なることは、a~gの7つの選択肢を6つに解答欄に使用するということで、1問間違えると2問分間違えてしまう可能性があるということです。
例えば、問題1の正解が「a」で問題2の正解が「b」だとします。もしあなたが間違えて問題1に「a」を解答したとすると、問題1と問題2の両方が不正解になってしまいます。ですから、解答は最後にまとめて行いましょう。
解答方法は、
1.a~gの問題文を流して読む
2.テキストを読み、消去法で解答欄(問題用紙)に候補の選択肢を記入する
3.テキストをしっかり読んで候補の中から選択肢を1つ選ぶ
文脈や文章の構成から、確実にあてはまらない選択肢というのはすぐにわかります。そこから選択肢が限定されていき、テキスト全体の構成と比較しながら答えを導き出していきます。
DELE C1「リーディング」TAREA 4の解答方法
文章量が多いのと、専門分野の用語が出てくるので難しいです。自分の得意な分野のテーマが当たればラッキーですが、大抵はそうではありません。
今回は、TAREA4は各国のダンスをテーマにした問題で、「ダンスが生まれた背景」や「ダンスの形式」「ダンスの意味」などの比較でした。
ひっかけ問題が多いので、文章全てを読み終わる前に解答してしまうと、後になって似たような単語が出てきて混乱してしまうので、キーワードに下線しながら解答をまとめていきましょう。
まず問題文を読んで、類義語と対義語を意識して本文を読んでいくと解きやすいです。
解答方法は、
1.問題文を読む前に、a~fのテキストを先入観を持たずに流して読む
2.問題文を読み、テキストで読んだ内容を踏まえて問題文のキーワードに下線を引く
3.a~fまで全てのテキストをしっかり読みながら問題文と一致するものに下線を引く
4.最後に解答をする
最初の流し読みで、テキストの内容をある程度理解できれば、その後問題文を読んだ時点で大まかな解答の選択肢が絞られてきます。
時間の問題もあるので、テキストの細部まで理解しようとせず、全体として何が言いたいのか、問題で問われているところはどこかを意識しながら進めていきましょう。
DELE C1「リーディング」TARAEA5の解答方法
文法問題ですが、問題数が14問なので、時系列やテキストの読解を間違えたまま解いてしまうと連鎖で一気に点を落としてしまいます。
医療に関するテーマでしたが、B2と難易度は変わらない印象でした。動詞、形容詞、副詞の知識が多いと有利です。
苦手な人は、文章力が圧倒的に足りないことが原因の1つです。文章を読み慣れていないので、本や記事をたくさん読んで文章力を身につけましょう。
たくさんの文章に触れることで、文法の傾向やパターンが見えてくるはずです。
解答方法は、
1.テキスト全てを流し読みしながら選択肢の中から違和感のあるものを消去する
2.残った選択肢の中から、テキストの流れから一番しっくりくる選択肢を選ぶ
3.最後にテキスト全てをしっかり読んで見直しをする
「違和感」や「しっくりくる」というものは、たくさんの文章に触れてきた経験からくるものです。
最後の見直しが一番大切です。TAREA5は配点が高いので、しっかり時間をかけて解きましょう。
DELE C1「リーディング」の問題を解く順番
通常はTAREA1~TAREA5まで順番に解いていくと思いますが、実はTAREA4とTAREA5で40問中22問の配点があります。全体の55%の配点が最後の2題に集中しているということです。
TAREA1~TAREA3で満点をとったとしても45%しか取れないので、合格基準値を最低60%とすると、TAREA4とTAREA5が極めて重要になります。
そこで、TAREA4とTAREA5を先に解くことをおススメします。序盤の、まだ頭がフレッシュなうちに文章量の多いヘビーなTAREA4と、問題数が多く配点の高いTAREA5を解けば正解率は少しでも上がるでしょう。
DELE C1「ライティング」の解答のヒント
DELE C1「ライティング」TAREA1の解答方法
講義、スピーチまたはプレゼンテーションの一部の音声に基づいて、個人的な見解も含めながら、論争的かつ解説的な文章を書くものです。
今回はペルーの料理人のスピーチでした。その背景にある、ペルーが抱える社会問題、料理人の未来の形についてがメインテーマです。
DELE C1のライティングでは、感想文やエッセイのような自由な形式でスペイン語の文章が書けるだけでは評価してもらえず、論文のように与えられた情報やデータをもとに、序論、本論、結論の形式で構成された論理的で説得力のある文章が必要です。
序論:あるテーマで問題を立てる
本論:問題ついて論理的・実証的に論述を展開する
結論:立てた問題に解答を与える
文章の構成力、個人的な意見を踏まえた解説力が最も大切で、フォーマルな文章としてどれだけ完成度が高いかがカギとなります。
時間にも限りがあり、即興でまとめるのは難しいので、序論の入り方、本論の基本構成、結論のまとめ方など自分のパターンを作っておいたほうがいいかもしれません。
インスティトゥト・セルバンテスの試験ガイドに記載されているTAREA1の解答例:
DELE C1「ライティング」TAREA2の解答方法
オプション1ではグラフやデータを元にレビュー、レポート、または記事を書き、オプション2では推定のシチュエーションを元に苦情の手紙、奨学金申請書または推薦状を書くものだとされています。
オプション1では元となるデータの情報が多いので、書きやすいですが、データの解釈と文章の構成を考えるのに時間がかかります。
オプション2を選ぶほうが無難ですが、正しい書き方のテンプレートを事前に用意しておかなければなりません。
一定の書き方の基準があるので、各テーマの書き始め方、構成、締めくくり方を勉強しておきましょう。
インスティトゥト・セルバンテスの試験ガイドに記載されているTAREA2苦情の手紙の解答例:
準備段階においてライティングの採点をしてくれる人がいないことは致命的です。
ライティングが苦手な人は、DELEに特化したスペイン語の先生に採点してもらうことをおススメします。
有料ですが、オンラインでライティングを訂正をしてもらえるサービスもあります。
A Por El DELE / Escuela DELE Online:
DELE C1「リスニング」の解答のヒント
DELE C1「リスニング」TAREA1の解答方法
会議、スピーチ、プレゼンテーション、ラジオニュース、プロジェクトがナレーションされている中程度の長さのテレビ番組、学問分野に関連する主題の経験など約700~750単語の音声です。
解答方法は、
・音声が流れるまでに与えられる時間内に、問題のa~lまでの選択肢を見て、どのような単語があるのかを確認します。
・問題文をできるだけ多く読んでおきます。全ての問題文を読み終える前に音声が流れ始まるので、それからは音声を聴きながら問題文を読んでいきます。
・音声を聴かなくても、問題文の流れからどの選択肢が当てはまるかは、ある程度予想はできるので、うまく聞き取れていなくても、いくつか候補をあげて問題文の文章を完成させておきます。
・1度目の音声で全て理解する必要はありません。1度目の音声で、どの部分の音声が問題文の内容を話されているのかがわかれば十分です
・2度目の音声で、問題文と選択肢を完全に聞き取ります。万が一聞き取れなくても、全体の内容がつかめていれば、問題を解ける可能性は高いです。
TAREA1は他のパートと比べてシンプルで解きやすい印象です。類義語を見極められるかがカギとなります。
DELE C1「リスニング」TAREA2の解答方法
2人で交わされる会話(対面・電話)や交渉など多種多様なトピックで、それぞれの問題で220~300単語の音声が流れ、1つの会話あたり2問です。
解答方法は、
問題を読んで、音声を聴くという繰り返しですが、登場人物が2人いるので、問題を読む際に主語がどちらか確認することを忘れないようにしましょう。
1つの会話に2問あるので、どこまでが1問目でどこからか2問目なのか、境目を理解するためにも、どちらの登場人物が話していることが問われている問題なのかを意識しながら聴いたほうがいいです。
また、明らかに聞き取れる内容の選択肢は、ほぼひっかけです。
会話の終盤にキーワードがあることが多いので、問題文は最後までしっかり聞き取ることが大切です。
DELE C1「リスニング」TAREA3の解答方法
政治、社会、経済など、様々なテーマで、2名または3名で行われるラジオやテレビのロングインタビューやディスカッションを聴いて解答します。
700から950単語程度の音声です。
問題は音声と同じ順番で出題されるので、さかのぼって解答することはないです。インタビューでは、インタビューアーの質問のタイミングと、問題の境目が合っているのでわかりやすいです。
すなわち、インタビューアーが話したときに、次の問題に入ったということです。それがハッキリしてるだけでも、かなり解きやすいです。
しかし、問題文が長いので音声を聴きながら長い問題文を読まなければいけません。そのため、あらかじめ慣れておくことが必要です。
3択の中で、明らかに違うものが1つあります。1回目の音声では、消去法で3択の中に2択まで絞ることができれば十分です。
1回目の音声で特に意識しておきたいのが、全体像として何がメインテーマなのか、話し手が何が言いたいのかをしっかり理解することです。全体像が見えてないと、ひっかけ問題にひっかかってしまいます。
DELE C1「リスニング」TAREA4の解答方法
インフォーマルな短い対話を聴いて、解答します。
10問あり、全体で380から450単語の音声ですが、音声は短く、テンポが速いので聞き逃しのないように集中することが必要です。
キーワードとなる単語の知識があるかどうかがカギとなります。
日本語でいう比喩や熟語がキーワードになっていることが多く、問題文に書かれている場合と、音声の中で話されている場合があります。
基本的に口語なので、スペイン現地に住んでいた人は有利かもしれません。10問あるのでここで点数を大きく落とさないためにも事前の勉強は必須です。
Spanish with Vicente: DELEの口語学習
DELE C1「スピーキング」の解答のヒント
DELE C1「スピーキング」TAREA1の解答方法
800単語程度のテキストを読んで、その要約を3分~5分でスピーチするというものです。あくまでも要約なので、主観的な意見は含みません。
構成は、メインテーマ、サブテーマ、筆者の意図で、いかに正確に、そして理論的に解説できるかがカギとなります。
テーマは社会問題が多く、今回は「テクノロジーの発達と人々の生活について」と「ビデオゲームが引き起こす影響について」の2つのオプションでした。
試験の前に20分の準備時間があります。その時間が非常に重要で試験の出来を左右することになります。
文章の隅々まで読む必要はないので、斜め読みでもいいから文章全体の内容、筆者の意図、それに対する自分の意見を、とにかくスピーディーに読みながら考えることです。
準備時間の手順は、
まず、2つのオプションから1つテキストを選択します。
そこで大事なのは、
TAREA2でスピーチしやすいほうを選ぶということです。数秒で選ばなければいけないので、タイトルを見て自分に馴染みのあるテーマを選んでください。
次に、テキストを読みながらメモ書きをするのですが、時間がないです。
800単語の長文をまとめながら2度読む時間はありません。
テキストを読みながらメモを取っていくのですが、メモ用紙にあらかじめ「メインテーマ」「サブテーマ1」「サブテーマ2」「筆者の意図」を書き込んで、そこにキーワードを振り分けながら書き込んでいきます。
全て読み終わったら、別紙にまとめます。そこで、あらかじめ振り分けてメモしてあった内容を整理していきます。
テキストには書き込みができないので、とにかく必要だと思った単語はメモしてください。まとめる段階で必要ないものは消去すればいいだけです。
スピーチ中にパニックにならないように、事前準備の20分のうち、残り3分はスピーチのシミレーションをするのに使いましょう。
実際に試験官の前に座った想定をして、声は出さずに頭の中でイメージトレーニングをします。
本番は、メモ書きをなるべく見ないで話すほうが試験官への印象はいいです。メモはあくまで、話す内容を忘れてしまったときだけ見るようにしましょう。
TAREA1の要約を話し終えたら、自ら締めくくって「以上です」と告げましょう。そこまでがスピーチです。
DELE C1「スピーキング」TAREA2の解答方法
テキストに関連して試験官から質問があり、自分を見解を4~6分でスピーチするというものです。
一方的にスピーチをするというよりは、面接という雰囲気です。
質問に対して臨機応変に対応することが大切です。
もし、質問の内容がわからない、または聞き取れなかった場合は迷わず聞き直しましょう。曖昧なまま筋違いのことを話してしまうのが、一番よくありません。
話す内容に行き詰ってしまったときは、自らの経験を織り交ぜて話すといいです。
例えば、テクノロジーについて知識がないのに、技術的な話をしようとしても限界があります。そこで、もし海外旅行したことがあるなら、その経験をもとにテクノロジー関係で海外で苦労したことや、日本と海外の技術の差などについてスピーチできます。
感心されるスピーチよりも共感されるスピーチを心がけて臨みましょう。
DELE C1「スピーキング」TAREA3の解答方法
4~6分の試験官とのフォーマルなディスカッションです。あるテーマについて4枚の写真をもとに話し合い、合意をするというもので、対話力が求められます。
即興で会話が進んでいくので、考えている時間はないです。ディスカッションの内容自体が問われているのではなく、根本的な「聞く、伝える」能力です。
スペイン語を使う上で一番実践的なスキルかもしれません。
そこで大事なのは、適切な表現を前置きしてから、自分の意見を言うということです。
・合意の表現
Yo diría lo mismo/ Comparto la misma idea/ Yo también diría que../ Estoy de acuerdo
・不合意の表現
No lo veo así/ No coincido en lo de../ No me convence lo de../ No se puede decir que..
・話を遮る表現
Disculpe la interrupción, pero../ Lamento interrumpir, pero..
・確認の要求
¿Estoy en lo cierto?/ ¿Me equivoco?/ ¿Se refiere a que..?
・説明の要求
¿Cómo es que..?/ ¿Cómo se explica el hecho de que..?/ ¿A qué se debe..?
・異なる意見を言うときの表現
Bueno, yo no diría que../ Una cosa es.. y otra cosa diferente es que..
このような表現を使うと、会話が締まります。大げさにフォーマルな会話をする必要はありませんが、丁寧な言葉遣いをするように心がけましょう。
スピーキング試験は少し緊張感がありますが、ナーバスになりすぎず、フレンドリーな感覚でもいいと思います。
試験はあっという間に終わってしまうので、自分の能力を100%出すことだけを意識して試験に臨みましょう。
マークシートと違ってラッキーがないので、自分の実力以上の評価はないことを自覚して、無理に難しいことを言おうとせずに使い慣れてる言葉を使うことが大切です。
まとめ
DELE C1は難しいですが、語彙数が多くて専門用語も多い分、馴染みのあるテーマが当たれば点数も上がります。
また、ヘビーな試験なので本番勝負的なところもあって、いかに試験当日実力を発揮できるかがカギになります。
勉強した分を無駄にしないためにも、当日集中することにも全力を注ぎましょう。
リーディングは語彙力勝負です。とにかく語彙力を鍛えましょう。
ライティングは事前準備が必要です。
「推薦状」「抗議文」「申請書」「グラフの解釈」などはテンプレートを用意しておくと役に立ちます。
リスニングは、慣れです。何回も模擬特有のパターンをつかめば聞きやすくなります。
スピーキングは、試験官とのコミュニケーションです。
文法の細かいところまで気にして話すよりは、リラックスして会話できれば試験官の印象もいいと思います。