DELE C1の合格へのヒントを紹介します。
2021年度11月開催DELE C1を受けてきました。前回の7月開催試験で不合格だったので、反省点を踏まえて再び挑戦しました。4カ月間でスコアアップして合格できたので、その方法について紹介します。
まず、採点結果は次の通りでした。
7月開催試験の合否通知が9月中旬だったので、11月開催試験まで実質2カ月弱の準備期間だったのですが、スピーキングはスコアを大幅に落としたものの、スピーキング以外の各科目は、戦略を変えるだけで大幅なスコアアップができました。
【前回試験と比べた各科目のスコアの違い】
リーディング:+4.38 pts
ライティング:+2.17 pts
リスニング :+0.83 pts
スピーキング:-6.21 pts
ハードな試験なので、しっかり準備をして戦略を立てなければ1発合格は難しいと思います。もちろん試験問題は毎回違うので、得意な分野が当たればスコアが上がる可能性はありますし、当日のコンディションも影響しますが、ノープランで試験に臨むのと、戦略プランがあって臨むのでは結果に大きな差がでることは間違いありません。
≪合わせて読む↑≫
DELE C1の出題内容(2021年11月開催試験)
DELE C11で実際に出題されたテーマを紹介します。
DELE C1「リーディング」の出題
・Tarea 1
手配旅行における、個人と旅行会社の契約書。
・Tarea 2
コーヒーの有名な産地フィンランドの魅力についての記事。
・Tarea 3
ー不明ー
・Tarea 4
彫刻などの芸術に関するテキスト。
・Tarea 5
子供のSNSの使用についてのメリットやデメリットについての記事。
DELE C1「ライティング」の出題
・Tarea 1
“失敗”についての世の中の傾向やその影響についての講義。
・Tarea 2
Opcion 1:睡眠についてのグラフの評価。
Opcion 2:図書館での、本の返却に対するトラブル。返却の遅延と本の保存状態の悪さによる罰金請求と、それをキャンセルするためのやりとり。
DELE C1「リスニング」の出題
・Tarea 1
先端テクノロジーの活用の仕方とその影響について。
・Tarea 2
交通違反の罰金についてのクレームのやりとり、友達の恋人についての会話のやりとりなど少し長めの会話。
・Tarea 3
youtubeや講師などマルチの活躍する人のテクノロジーがテーマのインタビュー。
・Tarea 4
友人同士の日常会話などインフォーマルな表現。
DELE C1「スピーキング」の出題
・Tarea 1
電気自動車について。その普及効果と、デメリット。人々の考え方について
・Tarea 2
電気自動車に乗りたいか
環境保護のために何ができるか
人々に優しい世の中とはどんなものか
・Tarea 3
落ち込んでいる姉妹に対して励ます方法の選択。4つの選択肢(山登り・料理教室・お笑いテラピー・ヨガ)から最善のアクティビティーを選ぶための議論。
DELE C1を攻略するための戦略
各科目の試験を進めていく上での戦略を紹介します。
DELE C1「リーディング」の戦略
リーディングは時間との勝負なので、解く順番と解き方が非常に重要です。
『問題を解く順番』
解く順番を大きく変えました。
前回試験:Tarea5→Tarea1→Tarea2→Tarea3→Tarea4
今回試験:Tarea5→Tarea4→Tarea3→Tarea2→Tarea1
全40問のうち22問がTarea4と5に集中しています。リーディング問題全体の半分以上が4番目と5番目に配点されているのは、出題者側の意図を感じます。
素直にTarea1から順番に解いていくと、時間に追い込まれてから配点の高い課題を解いていくことになります。また、語彙数も多くヘビーな試験なので、問題が進むにつれて疲れて集中力が落ちてきます。
ですから、時間にも集中力にも余裕があるうちに、配点が高い課題を解いていくことが賢明です。
また、個人的ではありますが、各課題の難易度を考えたときに、Tarea4が圧倒的に語彙数が多く複雑で、Tarea1が一番シンプルで解きやすいので、できるだけ難しい課題から解いていくようにしました。
『時間配分』
マークシート記入時間も含めて1題18分程度で計算しますが、それにこだわる必要はありません。
単純に、90分の試験時間に課題数5題なので、目安として1題18分以内に解かなければいけないというだけで、各課題で問題数、配点、難易度が違うのでそれに合わせて時間配分を考えることが大切です。
個人的には、1度目の試験の反省を踏まれて大まかな時間配分を設定を変更しました。
- Tarea5:15分
- Tarea4:25分
- Tarea3:15分
- Tarea2:20分
- Tarea1:15分
Tarea5:
問題数は多いですが、穴埋め問題なのでテキストは短く、読解も必要ないので15分あれば十分に解けます。
Tarea4:
語彙数が多く、問題も複雑なので、何度も見直しながら解いていくことになります。多めに25分とっても構いません。
Tarea3:
普通の読解問題なので、15分あれば解けます。
Tarea2:
テキストは長くないですが、問題それぞれが独立していないので、1問間違えると連結して複数問間違える可能性があるので、慎重に解く必要があります。
Tarea1:
形式的なテキストなので読解がしやすいです。ポイントをしっかり押さええて読解できれば、15分で十分に解けます。
『問題の解き方』
人それぞれ自分の得意な解き方があるので、他人の意見は参考になりませんが、時間に限りがある分、損をしないためにも出題傾向を理解して効率よく解答していく必要があります。
DELE C1を2度受験してわかった個人的な理想の解き方は次の通りです。
Tarea1:
基本的に、問題を読みながら解きます。「問題を読んで、テキストで確認して解答する」を1問ずつ繰り返します。テキストの順番に問題も出題されているので、全体の内容を把握していなくても、解答することができます。
Tarea2:
先に問題をすべて読んでテキストの内容を大まかに把握してから、本文に移ります。全体の内容を把握しなければ解答できないので、テキストを全文読み終えてから解答します。テキストの順番に解いていく必要はないので、わかったところから埋めていくことが大切です。
Tarea3:
Tarea1と同じように、問題を読みながら解きますが、形式的なテキストではないので、最後まで読まなければ本題やシナリオがわかりません。よりスピーディーにテキストを読んで消去法で解いていきます。
Tarea4:
問題をすべて読んでからテキストに移ります。テキストと問題が一致する部分に下線を引きながらテキスト全文を読みます。ひっかけ問題で似たような表現が多いので、しっかり時間を使って見極めましょう。
Tarea5:
テキストを読みながら、問題順に穴埋めをしていきます。テキストを2回読みますが、1回目は直感でスピーディーに穴埋めをして、2回目はしっかり読んで時系や前後関係を確認しながら解答を確定していきます。悩めば悩むほどわからなくなるので、答えに迷ったときは最初の直感が正しいことが多いです。
DELE C1「ライティング」の戦略
ライティングは下準備が最も重要になります。時間もないので、ゼロから構成を立てて書くのは難しいです。あらかじめ構成をつくっておいて試験に臨むと、余裕を持って書き終えることができます。スコアアップに成功した大きな要因は、下準備を念入りにしたからです。
『Tarea1』
あらかじめテキストの構成を作っておいてから音声を聴くと、ポイントが掴みやすくなります。メモを取る際、あらかじめ作っておいた構成にキーワードを当てはめていって全体のアイデアを完成させます。
➊ 序論(Introducción)
どんなテーマについて書くのか。議題について簡潔に説明する。
➋ 問題点(Problemas)
音声で聴いた内容に関して、問題点は何なのかを説明する。
➌ 現状(Actualidad)
問題点に対して、現状はどうなのかを説明する。
➍ 肯定(Puntos Positivos)
問題点について、ポジティブ面は何なのかを説明する。
➎ 否定(Puntos Negativos)
問題点について、ネガティブ面は何なのかを説明する。
➏ 解決策(Solución)
問題点に対する解決策は何かを説明する。
➐ 意見(Opinión)
問題点に対する自分の意見は何かを説明する。
➑ 結論(Conclusión)
②~⑦を総合的に判断して、議題に対して結論を導く。
試験が始まったらすぐに➊~➑をメモ用紙に記入して、音声を聴きながらキーワードをそれぞれの番号に振り分けていきます。音声を聴き終わったら、それぞれのキーワードをもとにテキストの構成を完成させて、解答用紙に清書します。
『Tarea2』
オプション1はグラフ、オプション2はフォーマルな手紙です。
オプション1は、一般的なテーマなので書きやすいですが、グラフを読解しなければいけないので時間がかかります。それに比べ、オプション2はテキスト構成のテンプレートを持っていれば時間もかからず書きやすいので、オプション2をおススメします。
個人的にも、前回の7月開催試験はオプション1を選択し、今回の11月開催試験はオプション2を選択しました。結果、大幅なスコアアップすることができました。
試験前の下準備として、オプション2を推薦状、奨学金申請書、抗議文に絞ってテンプレートを作りました。テキストの構成に合わせて、書き出しの文章、締めくくりの文章も考えておくと役に立ちます。
DELE C1「リスニング」の戦略
リスニング対策が一番難しいかもしれません。本番勝負な部分が多くて、具体的な対策がとれないのが現実です。しかし、大きく点数を落とさないコツはいくつかあります。
『Tarea1』
音声を聴かずにある程度テキストの前後関係から解答できてしまいます。リスニング試験が始まってからTarea1が始まるまでの間に、全力で問題を読んで解答の予測を大まかにしましょう。
音声では問題文の言い換えの表現が流れるので、一生懸命問題文と同じ文言を聴き探しても流れてきません。問題文の類似語を意識して聴くとわかりやすくなります。
重要なのは、1回目の音声で全体の内容を把握すること、そして音声のどの部分でどの問題文の内容が話されているかを聞き取ることです。全体の内容が理解できれば、大まかに予測した選択肢の中から答えが見つかる可能性が高いです。
『Tarea2』
1つの音声ごとに問題が2問あるので、問題をしっかり読んで主語にチェックを入れます。登場人物が2人いるので、どちらの問題にどちらの登場人物が当てはまるかをまず理解しなければいけません。
そして重要なのは、キーワードを拾うことです。問題文を意識せずに音声を何となく聴いていたら、キーワードを聴き逃してしまいます。やりとりの結末は重要ではないので、意識を問題文のキーワードに集中させて聴きましょう。
『Tarea3』
インタビュー形式なので、問題と音声をリンクして聴き取りやすいです。
しかし、話す内容のレベルが高いのと、問題文が長いので、問題文を読みながら聴解するスキルがより重要になります。
選択肢から正解を探すのではなく、消去法で間違ってる選択肢から省いていくやり方がおススメです。
『Tarea4』
会話がアップテンポで進んでいくので、集中して聴き逃さないようにしなければいけません。インフォーマルな口語なので、単語の意味がわからなければ問題も解けないのですが、注目したいのは、登場人物の声のトーンやテンションです。そこから状況を想像して答えのヒントにすることです。
また、1問1問が短く、すぐ終わってしまうので答えに迷っても次の問題まで引きずらないことです。音声は2度流れますが、1度目で全て答える気でいないと、テンポが速すぎてついていけなくなります。
Tarea4は全10問あって配点も高いので、わからない問題は割り切ってすぐ次に切り替える決断力を持っていないと、落とさずにすむ問題も落としてしまう可能性があります。全問正解を目指さなくても、とれる問題を確実にとっていくことが大切です。
DELE C1「スピーキング」の戦略
今回、唯一スコアを落としたのがスピーキングでした。
スピーキングでは、自分の得意なテーマに当たるかどうか、そして試験官との相性も重要になるので、スコアの大幅なアップダウンはあって当然だと思います。
試験官も人なので、少なからず主観は入ります。そして、試験とはいえ対話なので、コミュニケーションの相性は必ず影響します。会話のリズムが合って話しやすい試験官もいれば、妙に緊張する試験官もいます。また、採点試験官も全て同一人物でない限り、人によって採点の誤差はでます。
しかし、そこで大事なのは、それでも「コミュニケーションをとろう」「伝えよう」とする気持ちを前面に出すことです。
エネルギーが相手に向かわず、自分に向いてしまうと余計に緊張してしまい、伝わるものも伝わらなくなってしまいます。
採点されているということを忘れて、例えば自分が外国に行ったときのように、わからなくても、とにかく「伝えたい」「どう伝えればわかってもらえるか」という気持ちを思い出して、試験に臨みましょう。
『Tarea1』
テーマは選択式ですが2択なので、簡単そうなテーマよりも、自分に一番馴染みのあるテーマを選択したほうがいいです。それでも悩む場合は、その後のTarea2で試験官との対話で、話しやすいテーマにしましょう。テーマの選択に迷いすぎるよりは、早めに覚悟を決めて選択し、すぐにメモ取り作業に取りかかることが何よりも大切です。
スピーチは、構成とわかりやすさが大きな評価基準になります。細かな文法よりも、しっかりと理論立てて”伝える”ことができるかがポイントです。
20分間の準備時間にスピーチの構成をつくるのですが、用量はライティングと同じで、序論、本論、結論の3つを軸に作成します。そこで忘れてはいけないのが、主観を入れないということです。単純に、テキスト内容を自分の言葉にして書き換えるだけです。
あくまでTarea1は、「読んだことを上手に伝える」なので、主語を一人称ではなく、三人称にしてスピーチしましょう。
『Tarea2』
Tarea1の続きで、試験官との対話となります。テーマについての主観を話すのですが、ただ自分の話したいことを話すわけではなく、試験官の質問に答えなければいけないので対応力が必要になります。
的確に試験官の質問に答えながらも、自分の得意な話にもっていくことができればスムーズに話すことができます。
そこで、役に立つのが体験談です。正論ばかりを並べていくと、単語がどんどん難しくなっていくだけでなく、どこかで話題が途切れてしまいます。それなら、自分の使い慣れている単語を使って、体験談とテーマを融合させて話したほうが試験官への説得力が増します。
『Tarea3』
試験官とのコミュニケーションです。
会話の流れは、試験官が上手に誘導してくれるので心配する必要はありませんが、自分の立場を明確に表現することが大切です。
同意なのか反対なのか、肯定するのか否定するのか、ポジティブ面はどこでネガティブ面はどこなのか、などを適切な接続詞を使って話しましょう。曖昧な返答や、意見を相手に委ねることが一番印象よくありません。
自分の伝えたいことだけを伝えるのではなく、相手の意見もしっかり聞いて、意志を尊重しながら会話を進めていきましょう。
まとめ
DELE C1を2回目で合格することができました。1回目の試験から実質2カ月でスコアアップできたのは、反省を活かして積極的に戦略を変えられたからだと思います。
特にライティングは、試験前の下準備でスコアを確実に上げることができます。テキストの種類によって書き方が違うので、ノープランで臨むのは無謀です。
DELE C1で求められていることは、ノーミスで書けることではなく、目的に合ったフォーマルなテキストを適切に書けるかどうかです。そして、フォーマルなテキストには必ずフォーマットがあります。基準となる文型があるのです。
ライティングスコアの50%以上は下準備で決まるので、しっかり時間をさいて勉強しましょう。
リーディングとリスニングはマークシートなので、具体的な下準備ができません。しかし、出題傾向をしっかり理解することで、少しでも効率よく解答することができます。
忘れがちですが、インスティトゥート・セルバンテスが公開している試験要項を確認しておくと出題傾向がよくわかって戦略を立てやすくなります。面倒くさがらずにきちんと読んでください。語彙数、テキストの種類、評価基準、求められるスキルなどがわかるので役に立ちます。
Especificaciones de examen DELE C1(試験要項)
スピーキングスキルは、すぐに良くなるものではありません。しかし、継続的にスペイン語の本や記事を音読すれば少しずつ良くなります。また、試験では一般的な社会問題が出題される傾向があるので、日常的にニュースをチェックしておく必要があります。
自分の実力以上の力は発揮できないので、背伸びをせず自分の言葉で話しましょう。
DELE試験は年に数回しか開催されませんし、コストもかかります。せっかく受験するなら、しっかりと準備をして万全の状態で臨みましょう。